◆その69~イツを何時(いつ)までも使わなかった場合
二十五年ほど前の事。“霊に憑依されやすい”という高校生の男の子が、母親の依頼で神社に相談に来られました。
「こんにちは!!」。神社の扉を開けて入ってきた彼は、不思議なオーラに包まれた少年でした。
早速、彼から話を伺うと、彼自身は霊に遭遇した経験はないが、自分が被写体となる写真には、必ずと言っていいほど不思議なモノが写り込むと言うのです…。
彼が持参した写真を拝見すると、彼の体の一部、腕などが部分的に消えていたり、彼の顔の眉間の辺りに花のようなモノがハッキリと写っているなど、心霊写真と言うよりは“不可思議”の一語に尽きるものでした。
また、彼を包み込む神々しいまでのオーラと、印象にハッキリと残る容姿に「以前、どこかでキミに会った、いや、見た事がある気がするんだ…」と私が言うと、「先生、ソレ、テレビだと思います!!」と彼。伺ったところ、子役として有名ドラマに主役級で出演していたとのこと。
私の占断はまとまりました。
「○○クン、キミは憑依されているのではなく、元々、イツと呼ばれる神に通じる不思議な力を持っている。これが神様の場合だとミイツ(御稜威)となる。またこのイツは、その時々に応じて神界から与えられ、使わないと消滅してしまう、何時(イツ)にも通じるんだ…」。
「先生、それではボクは、これから何をすれば…」。彼は驚いた様子で、震えながら尋ねてきました。
「そうだね。このまま役者を続ければ、トップスターも、ハリウッドも夢じゃない!! またキミは、イエス・キリストや、アレクサンダーなど、歴史に名を残した偉大な宗教家や王とも同じイツを持っているようだから、もっと大きなステージを目指す人生もあると思うヨ!!」
「わかりました。がんばります!!」
彼はニッコリと微笑みながら帰っていきました。
その後の彼ですが、家庭の都合で役者業は諦め、専門学校を卒業後、明治末期から続く老舗の跡取りとして祖父の営むお店に入られました。しかし、それから間もなく祖父が亡くなり、相続問題や経済問題など彼の周囲でちょっとしたアクシデントが次々と重ってしまい、彼も彼の家族も、その場所から離れなければならない運命となりました。
それから数年後、彼の母親から一通の封書を頂き、そこにはこんな事が書かれていました。
~天佑先生、息子は先生が仰ったように、旧家や老舗という決められた狭いワクに嵌る子ではなかったようです。先生が見通されたように、広い大きな世界へと羽ばたくべき子でした。
私たちは何もかも失い、一からやり直す事となりましたが、息子は一人でメキシコへと旅立ちました。また何時の日か、先生の元を訪ねる事があると思います。その時は、相談に乗ってやって下さい~
私は、イツの日か、海外での武者修行を終えた彼が、キラキラと輝きながら私の元を訪れる日が来るのを、心待ちにしているのです。
うつしよを みちゆくすべは いつちから
いつもちふるが かなめなりけり
(現し世を 道行く術は イツ〔稜威〕力
イツ〔何時〕用うるが 要なりけり)
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