◆その10~座敷わらし
陰陽師-穂積天佑のコラム
今から十年ほど前のことです。長年介護してきた母が亡くなってしまい、心にポッカリと穴が開き、気持ちも落ち込み体調も悪くなっておりました。
季節は夏。ちょうど八月初旬の頃、座敷に布団を敷いて休んでいました。ウトウトとし始めると身体が金縛り状態となり、私の隣に何かボンヤリとしたものが見えるのです。目をやりますと、白っぽい服を着たおかっぱ頭の十歳ぐらいの女の子が座っています。
女の子は澄んだ声で「具合悪いんでしょ。私が治してあげるから、そのまま寝てて……」と声をかけ、私に覆いかぶさるような状態で、フーッ、と私の身体に息を吹きかけてきます。彼女が身体の端から端まで息を吹きかけてくれるうちに、私はいつしか、心地良いまどろみへと落ちていったのでした。
それからしばらくして「終わったよ。起きて」と、かわいらしい声。目を開けますと、先ほどの彼女が私を眺めて微笑んでいます。
「どう。治ったでしょ」
あれほど悪かった私の体調は、すっきり爽快になっていました。
「あ・り・が・と・う」
私が彼女に感謝の言葉を述べると、
「いいんだよ。もう、大丈夫……」
そう言い終えると、彼女は、光の中へと消えていきました。
古くから続く家には、その家や家族を守護する子供の霊が住むと言われ、それを「座敷わらし」と呼んでいます。
彼女も我が家の座敷わらしのようで、今でも時折、遭遇することがあります。
あなたさまのお家にも、そんな幸運を呼ぶ座敷わらしが、住まわれているかもしれません。
いとけなき わらべのすがた まみゆとき
いへにさきはひ おとづるとしる
(稚き 童の姿 見ゆ時 家に幸い 訪ると知る)
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