◆その42~御先祖様へのお祈りの仕方
今から10年ほど前、A子さんという女性が相談に訪れました。
当時30代後半という御年齢の割に古典的な信心深さを持つ彼女は、3日に一度、御祖先のお墓参りをしていましたが、仕事が長続きしない、良縁がない、同居する御両親との関係もうまくいかないなど運に恵まれずにいました。
よくよく聞いてみますと、六代前の祖先に〇〇小町と称される美女がおられたそうです。
言い寄る数多の男性の中から一番みどころのある若者を婿に迎え、夫婦で家業を繁栄させ裕福な家庭を築いた御先祖にあやかろうと、3日に一度、墓所へ「祈願」に出掛けているというのです。
お話を聞くうちに、彼女は祖先を「願いを叶えてくれる神さま」のように考えていることがわかりました。
祖先を含む死者というものは肉体を失った霊体で、数十年、長寿の方なら百年あまり現世で様々な仕事や務めを終え、草葉の陰で永遠(とわ)の休息を取っている存在です。
そうA子さんにお話しすると彼女は慌てた表情で「天佑先生、私、間違ったことをしていたのでしょうか?」と尋ねるので、私はこう申しました。
「いいえ。御祖先はご自分の根っこですから敬うことは大切です。ただ御祖先は、この世での務めを終え静かに休んでおられます。
お祈りされる時は手を合わせ、御心の中で(ありがとうございます。長きお勤めお疲れ様です。ゆるりとお休みください)と、感謝の一言を述べると良いと思いますよ」。
それを聞いた彼女は「ありがとうございます。やってみます」と答え、明るい表情で帰って行きました。
それから一年後、彼女から一通の便りがありました。彼女の人生にはその後転機が訪れ、良き仕事に恵まれ、出会いもあり、幸福な家庭生活を築いているとのこと。
手紙の末尾には「天佑先生、私、幸せになります」と記されていました。
うつしよの つとめはたして おくつぎに ねむるみおやに おもひはすなり
(顕世の 務め果たして 奥津城に 眠る御祖に 想い馳すなり)
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