◆その48~ 鎮魂の成功 その1

陰陽師-穂積天佑のコラム

10代後半頃の私は「霊との遭遇」に悩まされていました。

ある日の深夜。家の廊下で青い羽織に袴、脇差を差した総髪の素浪人風情の五十がらみの男性に遭遇し「大きくなったな」と一言、深い声を掛けられ、振り返るとその姿は消えていました。

また別の日の夜には、なかなか寝付けず金縛り状態となり、女性のすすり泣くような声が聞こえてきました

よくよく見ると、切れかかった和服を着て胸ははだけ、血が流れているのが見える。

日本髪を結ってはいるが顔は半分焼けただれ、直視し続けることができません。

さまよえる未浄化霊と判断し、清めの大祓詞を唱えましたが居続ける様子だったので、荒ぶる霊を鎮める「ヒフミの数歌」を唱えました。

ひふみよいむなやこともちろらねしきるゆいつはぬそをたはくめかうおえにさりへてのますあせえほれけ

すると女性の霊は「脅かしてごめんね。でもお前にだけは私の受けた苦しみをわかってほしかったんだよ」と告げ消えていきました。

それから3年。彼らに遭遇することもなく、入学した神道系大学の卒業論文に取り掛かっていると頭の上から声が聞こえます。

「おい、久し振りだな!」

顔を上げた目の前に、あの浪人武士と和服の女性が立っています。彼らに少しムッとしたものを感じた私は、

「何か御用ですか? それともまた私を脅かしに来たのですか!」と言うと浪人は「いやいや御免! そんなつもりはないんだ」と。

「では何なんです! あなた方は一体誰なんです!」
「それでは明かそう。私はお前の先祖だ! 横にいるのは私の妹」
「……」。

「実はお前に私たちのことを調べてほしいんだ。それはお前のこれからの人生の糧にもなる。頼んだぞ!」

「すみません、ご先祖様、お名前は?」
「そのうちわかる!」
「頼んだわよ!」――二人は消えていきました。
(つづく)

穂積天佑

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