◆その58~ 自分の立ち位置に誇りと自信を持つ幸運

陰陽師-穂積天佑のコラム

代々神職を務める家系を“社家(しゃけ)”と言います。社家はその長い歴史の中で様々な伝統を受け継いでおり、我が家は陰陽道系の憑き物落(つきものお)とし等の加持祈祷、独自の古式占術を今に伝えます。

若い頃、ある神職の会合に出席した時のこと。年上の宮司Aがこちらを見てニヤニヤ笑い「アイツは俺たち國學院で学んだ神社神道で神明奉仕している神職と違って先祖代々の卑しく怪しい拝み屋だからナ! 付き合うのヤメといた方がいいゼ!」と周囲に話すのを聞き気持ちがドンと落ち込み鬱(ふさ)ぎ込んだことがありました。

それから15年の歳月が流れた頃、ある男性が私を訪ねてきました。建築業を営む30代の彼は、重度の鬱(うつ)状態。聞けば地元神社の宮司に鳥居の建設を依頼され、歴史を詳細に調査し設計図を作って持参したところ、宮司は一瞥し「オメェこの鳥居ウチのお宮の鳥居じゃネエヨ! ウチは鎌倉時代からの八幡神社だゼ! オメェ大工なのに八幡鳥居も知らネェのかヨ!」と酷い恫喝のもと責め立てられ、仕事への自信も生きる希望も失いつつあるとのことでした。

神社の鳥居は神明、明神、八幡など祭神や歴史ごとに決まった定型があります。彼の設計図はオーソドックスな八幡鳥居で間違いなく、気になってその宮司の名を伺うと、かつて会合で私を揶揄したA宮司でした。私の時と同様、彼の発言には底意地の悪さに加え家庭の都合で飲食店業から即席仕込みで宮司となったが故の専門知識の稀薄さが見て取れました。

さらに彼の神社の周辺には古墳や古戦場跡が多く点在し、A宮司にはある種の「憑依現象」による「人格の変化」が生じている可能性もあることを伝えると、彼は深く頷き納得して帰っていきました。

その後、A宮司の仕事を丁重にお断りした彼のもとには、すぐ別のビッグなお仕事が舞い込み「御相談にうかがって厄祓いもしていただき本当に大きく開運しました」とのことでした……。

ひとはみな おのがたちたる ところこそ うんをひらくる もとゐとぞしる
(人は皆 己が立ちたる 所こそ 運を開くる 基とぞ知る)

穂積天佑

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