◆その70~イツをすぐに使った幸運

陰陽師-穂積天佑のコラム

 これは二十年近く前の事です。

私は地域の地鎮祭へ出向き、奉仕を終え片付けをしていると、建築業者の担当と思われる三十代の青年が話しかけてきました。

 「ねえ、神主さんって、こういう神事の他に何か仕事とかあるの?」

少しムッとするものがあり、多少感情的に私は答えました。

 「ああ他にも仕事はあるんだよ。例えば占いとか…。ちなみにあんた、勤めている会社の経営状態が思わしくなくて、先行きに不安を感じているだろう?」

 「なぜわかるんですか? 実はそうなんですよ。今日の午後空いてませんか? 相談に伺いたいんで」

「ああいいよ。おヒマな神主なんでね」

 そんなやりとりがあり、相談に訪れた彼を占ってあげました。

 占断の結果は、彼には内在する実力があるが、職場の状況から充分発揮出来ず、また転職運も出ているが、ひとまず現在の職場で努力すべき…というもので、併せて陰陽道の簡単な開運法を教えておきました。

 すると不思議な事に、経営状態の悪かった彼の勤め先の業績が上がり始め、彼自身も職場で仕事に張り合いを感じるようになり、さらには別の会社から好条件で誘いを受け、新天地へと移動したその時、彼がこれまで勤務した会社が百年の歴史に幕を引いたのです。

 彼は新会社で新たなポストを与えられ、最初は生き生きと働いていましたが、次第にある種の“生きづらさ”を感じるようになり、再び私の元へ相談に訪れました。

 私はこれまでの占断から、彼に告げました。

 「あなたは集団の中の一人、というよりは、独立独歩、一人でクリエイティブに仕事をするタイプのように感じるんだ。例えば、コンサルタントとか…」

 「えっ、僕がコンサルタント…ですか?」

 「やってごらん!!」

 その翌日、彼の家の台所にあったリンゴに、鼠のかじった痕を夫人が見付け、こう言ったそうです。

 「これって子之神社の宮司さんに相談に行ったから、お使いのネズミのお告げじゃないかしら…」

 確かに私が宮司を務める子之神社のお使いは、ネズミなのです。

 この出来事を切っ掛けに、彼はコンサルタントとしての道を歩むようになり、現在大手企業の相談役を幾つも受け持つ大成功者として活躍しています。

 イツ(古神道で言う、神に授かりし威力)を、イツ(何時)までも待つ事なく、その機会ごとに実行に移した結果を示す好例と言えるでしょう。

かみよりぞ さづけられつる うんはしも

 とくもちふるが みいつなりけり

(神よりぞ 授けられつる 運はしも

 疾く用うるが 御稜威なりけり)

穂積天佑

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先祖である穂積濃美麻呂が陰陽道の祖である役行者(えんのぎょうじゃ)より陰陽の秘法を授けられ、また同じく師の先祖となる菅原宮内少輔道景は、あの平安時代の大陰陽...

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