◆その31~話し上手に聞き上手

陰陽師-穂積天佑のコラム

 今回は、ある大手企業で管理職を務めていたOさんという方のお話です。このOさんは、才知あふれ、仕事一筋の真面目な方なのですが、悩みがあられました。

それは、会社で部下が付いて来てくれず、彼らをうまく指導できない、というものでした。
 私は、その原因を探っていく中である事に気が付いたのです。

 それは、彼のご相談をお受けする度に、他のご相談者の倍ほど疲れること。そして、彼のご相談の日が近付くにつれ、言いし知れぬ気の重さを感じることでした。

 それからご相談の度に、冷静に、このOさんを観察していくと、段々とその原因が分かっていったのです。

 それは、彼の会話が、ただひたすらに、ご自分のことを述べる一方で、こちらからの話にまったく耳を傾けておられないこと。そして、忠告などの大切なことも上の空で聞いておられることでした。

 人との会話とは「言交(ことか)わし」と言い、言の葉のやり取りが大切なわけです。彼にそのことを告げると同時に、部下たちへの指導の中で、彼らの「言い分」をなるべく多めに聞いてあげるよう勧めてみました。

 するとどうでしょう。

 Oさんと部下たちとのコミュニケーションが次第にスムーズになり、一年経過した頃には部下たちから慕われる上司へと、Oさんは大きく変化していったのです。

 私との会話でも、うまく言の葉のキャッチボールである「言交わし」ができるようになり、それまで沈鬱な表情であったOさんは、とても朗らかで、話していても、楽しく感じる方となりました。

 「話し上手に聞き上手」は、人様とのお付き合いの基本、なのです。
 
ことのはを うたたのしくぞ かはすとき
               ひととのえにし ひらきゆくなり

(言の葉を 転楽しくぞ 交はす時 人との縁 開きゆくなり

穂積天佑

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先祖である穂積濃美麻呂が陰陽道の祖である役行者(えんのぎょうじゃ)より陰陽の秘法を授けられ、また同じく師の先祖となる菅原宮内少輔道景は、あの平安時代の大陰陽...

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