◆その8~黄昏時の怪

陰陽師-穂積天佑のコラム

 黄昏時とは、夕闇迫る時刻のことです。たそがれは「誰(た)そ彼(かれ)」、すなわち「あなたは誰?」という、この世ならざる者たちと出会う時刻でもあります。

 今から十五年ほど前でしょうか。ある自営業の方の御相談をお受けしていた日のことです。夕方近くなりその方から、「宮司、長い時間、相談に乗っていただいた御礼と言っては何ですが、夕食をご一緒にいかがですか?」との申し出をいただきました。同世代で気も合う彼からの申し出を受け入れ、近隣の御寿司屋さんへと向かいました。

 食事を済ませ、酌み交わしたビールでほろ酔い気分となり、ちょうど行われていた産土(うぶすな)神社のお祭りへ二人で見物に向かいました。

 そのお祭りはお神輿のお浜入で有名なのですが、急に大風が吹く荒天となり、お浜入中止との放送が鳴り響きました。お神輿はトラックに載せられ、お囃子鳴物連に供奉され神社へ向かう形に変更…となったところで急に風が止み、海も凪いだのです。
その自然現象に不可解さを感じながらも、賑やかに神社へと向かうお神輿の行列を二人で見ていました。すると自営業の彼が、
「宮司、こんなに小さな集落なのに、祭り行列は随分と賑やかで、人数も多く感じますね」
と言うのです。確かに賑やかさと膨れ上がるような人数の多さは不思議でした。
「宮司、楽しそうです。行列の仲間に入って一緒に踊りませんか?」

 そう彼が言った時、私は行列の中に垣間見てしまったのです。この世ならざる者たちが介在していることを……そう、「百鬼夜行」を。

 今まさに行列の仲間に入らんとしている彼はその事に気付いていません。
「〇〇さん、駄目だ! その中に入っては!!」
私は、彼を後ろから抱きすくめました……。

 それから一年後、そのお祭りで大きな事故が起きたのです……。

 私が宮司を務める子之神社でも、かつてはお神輿のお浜入を日が暮れゆく黄昏時に行っていました。毎年事故もあり何とも言えぬ恐怖感を感じ、運命学的見地から、黄昏時に差し掛かる前に終了するよう時間を早めたところ、事故も起こらず平和で穏やかな祭りとなりました。

 神社への参拝も、黄昏時に行うとこの世ならざる者たちと遭遇し、あなた様の運気を著しく落とし、危険な目に遭う可能性を呼び込むことにもなりかねません。参拝は、日のある明るい時刻に行うことにいたしましょう。

  たそがれの おほまがときに まみゆるは
 このよならざる おにとしるなり

(黄昏の 大禍時に まみゆるは この世ならざる 鬼と知るなり)

穂積天佑

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先祖である穂積濃美麻呂が陰陽道の祖である役行者(えんのぎょうじゃ)より陰陽の秘法を授けられ、また同じく師の先祖となる菅原宮内少輔道景は、あの平安時代の大陰陽...

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