◆その26~使用済みの御守による災難
私が中学生の頃、Nくんという友達がいました。長身の野球少年で頼りがいのある彼は、ひ弱な私にとって兄貴のような存在でした。
そんな彼が中学二年生の夏、包帯で右腕を巻いて登校してきました。「Nくん、どうしたの?」と尋ねますと、「部活で転んじゃって、骨折しちゃったんだ」と、はにかみながら答えてくれました。
そして二学期半ば過ぎの十月末つ方、腕の骨折が治ったNくんが、今度は松葉杖で難儀そうに歩いていたのです。「Nくん、今度はどうしたの?」「ああ、心配かけて悪いな。学校帰りに車にはね飛ばされちゃって……」。いつも明るいNくんもさすがに元気がありません。
その後、Nくんと会話していたとき、彼が学ランの内ポケットから古びたボロボロの御守袋を出して私に見せてくれました。
「この御守さ、去年卒業した野球部の先輩からもらったんだ。尊敬する人が愛用していた、オレの大切な宝物なんだ!!」
年季の入ったその御守を見た私は、ふと肌寒い嫌なモノを感じました。家に帰り、我が家が代々奉仕する子之神社の宮司であった祖父に一連の話をし、新しい御守を授けてもらい、翌日Nくんに渡しました。
「キミの大切な宝物にケチつけちゃ悪いけど、御守って最初に手にした人だけを神さまが守る、その人だけのものだと思うんだ。よかったらうちの神社のこの御守を使って! 大切な先輩からいただいた御守は、思い出の宝物としてしまっておくと良いよ」
Nくんは「ありがとう。お前からもらったこの御守、これから肌身離さず持つことにするよ! そして先輩の御守は、思い出として大切にしまっておくことにするよ……」
その後、Nくんは怪我をすることもなくなり、十三年ほど前に偶然近所で出会った際も元気で、実家のご商売も順調のようでした。
御守は、最初にお手に取られ、お持ちになられた、そのお方だけの御守護のお品です。お忘れなきよう……。
みまもりは さずけしひとの かむえにし
みちのことはり わするなよゆめ
(御守は 授けし人の 神縁 道の理 忘るなよ夢)
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