◆その57~ 他人をうらやむ不運

陰陽師-穂積天佑のコラム

世の中には、常に他者と自己を比較して己の不運を嘆いている人がいます。実は私にも、そんな時期がありました。

それは全国から神職を目指す学生が集う大学の神道学科で学んでいた頃のこと。ある著名神社の世襲跡取り息子と席を並べた時に、彼の恵まれた環境をうらやむ自分がいました……。

心の中でいつも、自分の置かれた環境への不満をつぶやいていました。「どう頑張ったって小さな田舎神社の貧乏神主のオレに比べ、アイツは大きくて裕福な有名神社の跡取りで、将来が何もかも約束されているんだ……」と。

それから40年近い歳月が過ぎ、ふとテレビをつけニュースを見ましたらば、ある観光地の有名神社で大きな事故が起こり、年配の宮司様が下を向いてうなだれ、事故の謝罪をするありさまが大写しになっていたのです。よくよく見ればその宮司は、大学時代、隣の席に座っていた、あの彼……でした。

窮地に立たされている彼の姿を見て悟ったこと。それは人にはそれぞれ、“分”というものがあり、一見、羨ましく見える人にも、外から伺い知ることのできない悩み、心の葛藤、苦しみがあるものなのだ、ということでした。

植物の種子が風に吹かれて飛び、落ちた場所で芽を出し、育ち、花開き、果実を実らせるように、人もそれぞれの置かれた場所で、己が可能性を開花させ、結実させるのが運気向上のポイントなのです!

それぞれに おかれしところ ねつきてぞ はなぞひらきて みはむすぶなれ
(其々に 置かれし所 根付きてぞ 花ぞ開きて 実は結ぶなれ)

穂積天佑

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